鐶(かん)

  和箪笥、船箪笥、茶棚、手箱などの抽手を紋章化したものといっているが、はたしてそうでしょうか。
もし、そうであるとすれば、かなり時代の降った鐶であります。
元来 古い抽手の鐶は丸こしらえでなく、角打ち仕上げの物が多く、所によっても異なるとはいえ、江戸末期まで角鐶が使われていました。

  鐶とは一般にいう金の輪のことでしょうが、環(タマキ)を金属製にしたものを指します。
では、環(タマキ)とは何か。耳環(みみわ)・指環(ゆびわ)・肘環{釧(クシロ)}など を指し、正円型の輪状をしている玉のことであります。

   古代からの「鐶」は丸い形が真物で、箪笥類の抽手に用いたものは後の模造的実用品といえましょう。 しかし、室町以降に流行したという蚊帳の環だけは はじめから丸いのが特徴でありました。
  これは、肘環に似ていましたが、蚊帳を吊すための実用具なのです。  となると 丸い鐶は新しい歴史のものかもしれない。 応仁のころの「温故知新録」には「クワ」と読むを鐶と称したことがあるといわれています。
木瓜の外郭を形作っている部分が、鐶の形に似ていることから 誤って鐶だと読んだのかもしれません。
おそらく木瓜の二重環のスタイルを一重に略したことから 鐶とよんだ とも考えられます。

「クワ」という発音が鐶に近いことも理由の一つになりますが、鐶紋の種類をみると、四つ鐶・五つ鐶 ・六つ鐶のものが圧倒的に多いのです。これも瓜紋が転化した証だ という学者もいます。 特に 他の家紋の構成要素などと比べてみると、一つ鐶・二つ鐶というものがベースにならなければならないのに あいにくと それが 見付かりません。
また外向き鐶あたりは江戸中期以降幕末・あるいは明治初期ころの上絵師たちに よって描かれたに過ぎず、外向き鐶というのも後の造形といわれています。